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松山地方裁判所 昭和43年(ヨ)102号 判決

債権者

石崎定夫

外三名

右債権者ら訴訟代理人

三好泰祐

債務者

伊予商運株式会社

右代表者

藤森兼三郎

右訴訟代理人

白石隆

主文

1  債権者らの本件仮処分申請をいずれも棄却する。

2  申請費用は債権者らの負担とする。

事実

第一、当事者の求めた裁判

一、申請の趣旨

債務者は、債権者らを債務者の従業員として取扱い、債権者らに対し、昭和四三年二月一日から本案判決の言渡に至るまで、毎月一日限り、別紙目録記載の金員を仮に支払え。〈後略〉

理由

一、(当事者と本件解雇について)

債務者は、肩書記載地に本店を、松山市高浜町、同市海岸通り、伊予郡松前町の三か所に支店を置き、船舶運送業、港湾運送業、自動車運送業などの業務を営む株式会社(以下債務者を単に会社という)であること、債権者石崎定夫は昭和二九年二月七日、同砂田昭は同年一〇月五日、同石崎昇は昭和三一年七月七日、同水口長一は同年八月一〇日にそれぞれ会社高浜港支店に港湾作業員(以下単に作業員という、もつとも作業員の職務内容には争いがある。)として入社し、昭和四〇年二月同支店が閉鎖され新たに同市海岸通り一、四五五番地一に新松山港支店(以下単に会社支店という)が新設されたことに伴い、債権者らはいずれも同支店に作業員として雇傭されたこと、会社は昭和四二年一二月二〇日に債権者らに対し別紙目録記載の一か月分の平均賃金を提供して、債権者らに対し解雇の意思表示をしたこと、債権者らが右予告手当の受領を拒んだので、会社は昭和四三年一月一一日にこれを松山地方法務局へ弁済供託したことは、いずれも当事者間に争いがない。

二、(労働契約の内容について)

まず、債権者ら作業員の従事すべき労務に関する労働契約の内容について検討するに、〈証拠〉総合をすると、債権者らが債務者会社に雇傭される際にかわした労働契約は、契約書などの作成はなくただ口頭でなしたものであるが、右契約の際に約した労務内容については、債権者らは港湾荷役作業員として従事するということのほかは、特に詳細なとりきめをかわしたことはなく、また就業規則によらないという留保を約したこともなかつたこと、債権者らは、入社以来主に沿岸荷役だけに従事してきたものであるが、会社支店では、昭和四〇年一〇月一六日、債権者ら作業員に適用すべきものとして、支店店限雇傭従業員就業規則(乙第八号証)を作成施行した(会社では高浜港支店時代から右とほぼ同じ内容の就業規則が存在していたものとみられる。)こと、右就業規則二条には「この規則で従業員(債権者ら作業員を指す)とは会社に採用せられ沿岸荷役、船内荷役その他港湾荷役に付随する作業及び貨物の自動車積降等の会社業務に従事する作業員をいう。」と規定して、債権者らの労務内容を定めていること、会社支店は、右就業規則の作成にあたつては、支店作業員の過半数で組織する全日本港湾労働組合四国地方本部松山支部(以下単に全港湾支部という)の意見を聴いたうえ、同年一一月一二日これを松山労働基準監督署に届出たこと、会社支店は、右就業規則を作成施行後直ちに債権者ら全作業員に一部ずつ交付し、その内容を周知させていること、ところが、債権者らが、右就業規則の制定に対し、そこに定める労働条件によることはできない旨の異議を留めたことはないこと、右就業規則はその後解雇時まで小改正はあつたが、作業員の労務内容に関する部分は何ら変更されていないことなどの事実が一応認められ、右認定を左右するに足りる疎明はない。

右事実によれば、遅くとも会社支店が右就業規則を作成してこれを松山労働基準監督署に届出をした昭和四〇年一一月一二日ころには右就業規則の効力が生じ、右のうち労働条件を規定した部分は、そのときから債権者ら作業員の労働契約の内容となるに至つたものと解せられる。したがつて、作業員である債権者らは、そのころから、沿岸荷役ばかりでなく、船内荷役その他港湾荷役に付随する作業および貨物自動車の積降し作業についても自己のなすべき業務としてこれに従事しなければならなくなつたものといわなければならない。

三、(本件解雇に至る経過について)

〈証拠〉を総合する(ただし後記のとおり一部に当事者間に争いのない事実を含む。)と、

①、会社支店が発足して以来、船内荷役は主に船員が担当していた(もつとも債権者ら作業員も船主の依頼により謝礼金をもらつて臨時船などの船内荷役に従事したことはある。)が、港湾運送事業法の改正などもあつて、船内荷役を船員に従事させることは適当ではないとして、海運局の指導などもあり、会社支店は、昭和四二年夏ごろ、同年一〇月一日からは船内荷役は債権者ら作業員に担当させたいという意向を持つに至つたこと。

②、会社支店が発足して以来、債権者ら作業員は、自社の貨物自動車の上乗り作業(会社支店の貨物自動車が松山市内などに配達に出かける際、これに助手として同乗し到達先で車から荷物を降して届先に運ぶなどの仕事。)や他社の貨物自動車の積降し作業に従事したことはあつたが、しばらく貨物自動車の積降し作業が途絶えていたところ、会社支店は、昭和四二年七月一〇日、姉妹会社である関西陸送株式会社(以下単に関陸という)と委託荷扱所契約を締結して、会社支店が関陸の荷物扱所(代理店)となり、関陸の貨物自動車が新松山港支店に着いたときは、その貨物の積降し作業は会社支店のほうで行なうこととなつたため、右作業を債権者ら作業員に担当させたいという意向を持つに至つたこと。

③、会社支店では、右船内荷役や貨物自動車の積降し作業はもともと債権者ら作業員のなすべき業務であると考えていたが、何分右作業を作業員が担当することになればその分だけ仕事量が増えるので、当時全作業員一三名中一二名が加入していた全港湾支部の了承を得てから実施するのが得策であると考え、同年九月五日、全港湾支部との団体交渉において、右の①および②の意向であることを伝え、その旨の申入れをしたこと。

④  そこで、全港湾支部では、同年九月二〇日ころ、会社支店の右申入れを受けるかどうかについて職場集会を開いて討議したところ、一部に過重労働になるということで反対の意見もあつた。(関陸の仕事については関陸の車が到着し荷を降す場所が会社支店から四〇〇メートルほど離れているためいちいちそこまで行つて仕事をするのは不便だという意見があつた。)が、本来船内荷役も沿岸における自動車の荷物の積降し作業もわれわれ作業員の手で行なうべきであるから、賃上げや増員など組合側の要求を会社側がのむならば会社側の申入れを受けてもよいという意見が大半を占め、ほぼその方向で意見がまとまつたこと。

⑤  右職場集会には、組合員一二名中ほとんどの者が出席し、債権者らもこれに出席したこと。

⑥  そして、同年九月二一日、会社支店と全港湾支部は、団体交渉を開いて右会社側の申入れ事項について話合つた結果、

(1)  小倉線と大分線を除く定期船の船内荷役は、昭和四二年一〇月一日から作業員が従事する。

(2)  臨時船の船内荷役は、すべて前同日から作業員が従事する。

(3)  関陸の貨物自動車積降し作業は、同年一一月一日から作業員が従事する。

(4)  右(1)ないし(3)の各作業を実施することになると、その分だけ仕事量が増えるので、その増加分に見合う分として、作業員七名を増員するとともに、作業員各人に対し、一日二四円の風呂代(船内荷役に従事すると身体が汚れるなどのため)と一か月二〇日以上就労した場合には一率月額一五〇円の手当、さらにリフト、クレーンなどの機械運転手、班長、副班長などには別に五〇〇円ないし一、〇〇〇円の手当(以上合計一人平均一、〇〇〇円くらい)を支給する。

旨の労働協約を締結したこと。

⑦、右労働協約は、口頭によつてなされたもので書面は作成されていないこと。

⑧、右労働協約の内容は、全港湾支部が前日作業員らの戦場討議に付して大方の意見の一致をみた内容とほぼ同様のものであること。

⑨、そのため全港湾支部は、右協約締結後職場集会を開いてこれが周知徹底を図ることはしなかつたが、同年九月二五日ころ、職場委員田中福一を通して、各作業員に対し、同年一〇月一日から定期船の船内荷役を作業員が担当することになつた旨(臨時船と関陸の仕事については報告した形跡はない。)を報告し、その協力方を求めたこと。

⑩、債権者らは、同年の春闘のころから、全港湾支部の執行部の組合運営に不満を持つていたところ、右労働協約の締結については全港湾支部執行部がわれわれの意見を聴くことなく一方的に決めめてしまつたとしていよいよこれに不信の念を強くするに至り、ついに同年九月三〇日に全港湾支部を脱退し、同年一〇月一日に個人加盟方式の松山地方一般合同労働組合(以下単に合同労組という)に加盟したこと。

⑪  しかし、債権者らは、右合同労組への加盟を会社支店に通告したことはないこと。

⑫  債権者らは、昭和三三年九月、他の会社従業員二〇名くらいとともに全港湾に加盟して同組合高浜支部の結成に関与したことがあるほか、全港湾組合員時代(右加盟時から、前記脱退時まで全港湾組合員であつたことは当事者間に争いがない。)、一度第一三回原水禁大会の際にカンパ活動に従事したことがある程度で、特に活発な組合活動をしたわけではなく、また全港湾支部の役員などの経験もなく、比較的地味な組合員であつたこと。

⑬  ところで、労働協約で約された各作業のうち、定期船の船内荷役については、同年一〇月一日ないし二日ころから実施されたが、債権者らもこれに従事したこと(この点は当事者間に争いがない。)。

⑭、右定期船は、大阪・松山線のそれで、日曜日を除く毎朝九時ころ新松山港に入港し、夕五時ころ大阪に向け出港するので、船内作業はその間に行なわれ、到着した荷物を陸へ上げる作業と発送する荷物の積込みとで作業員全員が行なつても数時間を要するものであること。

⑮  労働協約で定められた一人平均一、〇〇〇円くらいの手当については、同年一〇月分から支給され、債権者らも同月分から一人平均七五〇円ほどの手当を受領していること。

⑯  また、労働協約で定められた作業員七名の増員については、会社支店は、同年九月末ころから順次採用し、同年一二月ころまでには七名を増員し終えたほか、その職業安定所を通じて毎日一、二名を臨時雇いしてその不足分を補つていたこと。

⑰  そして、臨時船は、その実施時期と定められた同年一一月一日から同年一二月二〇日の本件解雇時までの間に、一回、一二月九日にパイナップル積載船が入港したのみであるところ、債権者らは、当初、臨時船の船内荷役をやることまでは全港湾支部のほうから聞いていないとしてこれに従事することに反対したが、会社支店側の説得によりこれに従事したこと(債権者らが右臨時船の船内荷役に従事したことは当事者間に争いがない。)

⑱  臨時船とは定期船(当時、前記大阪・松山線のほか、大阪・大分線、小倉・豊浜線などがあつた。)を除くすべての入港船のことで、大体、一、二か月に一回程度新松山港に入港しており、その作業内容は前記定期船のそれとほぼ同様であること。

⑲  しかし、関陸の貨物自動車の荷物を降す作業については、それが実施されるに至つた同年一一月一日から他の作業員は交替制でこれに従事したにもかかわらず、債権者らは、関陸の仕事をすることまでは全港湾支部のほうから聞いていないとして、これに従事することに反対して拒否したこと。

⑳  関陸の車は八トン車で、毎日ほぼ一回程度朝八時ころ、約七、八割の荷物を積んで新松山港にはいつてくるが、右の荷物を降す作業は、作業員が二人ずつ交替で従事して約一時間くらいを要するものであること。

前記のように、臨時船の船内荷役と関陸の自動車の荷物を降す作業について、債権者らのようにこれに従事することに反対する作業員がおつたため、会社支店長橋本義久は、同年一二月一三日作業員が船の荷上げをすませて休憩にはいつた午後三時ころ、従業員詰所において、債権者らを含む作業員全員に対し、同年九月二一日に成立した前記労働協約の内容を説明したうえ、今後作業員全員が臨時船の船内荷役と関陸の貨物自動車の積降し作業に従事するように要請したこと(日時の点を除き当事者間に争いがない。)

その際、債権者らから「もし不服なきときはどうするか。」という問いが発せられたのに対し、橋本支店長は、右作業に従事できないという作業員は直接支店長に申出るように答え、さらに「どうしてもできんという者は辞めてもらわにやいかんのじやないか。」と伝えたこと。

そして、債権者らが同月一五日に支店長室に赴き、橋本支店長に対し、「臨時船と関陸の仕事をやるについては賃上げをしてくれ、それじやないとわしらはできん。」と申入れたところ、橋本支店長はそれは話が違う。その分の賃上げもすでに一〇月分から実施しており、君らも受取つているじやないか。さらに賃上げをすることはできない。」旨を答えて、押問答をしたこと。

債権者らは、その際、支店長の回答に納得せず、賃上げをしないかぎり今後臨時船の船内荷役と関陸の貨物自動車の積降し作業には従事できないという意思を支店長に表明したこと。

そして、橋本支店長は、翌一二月一六日にも、債権者らに対し、右作業に従事するかどうか確認したところ、債権者らは前同様賃上げをしないかぎり今後右作業には従事できん旨の意思を表明したので、債権者らの右作業拒否の意思は強固なものであると判断したこと。

そのため、会社は、債権者らは「支店業務に協力の意思なきもの」であるとして、本件解雇をなしたものであること。

などの事実が一応認められ、〈証拠判断省略〉。

四、(不当労働行為の主張について)

債権者らは、本件解雇は、債権者らが正当な組合活動をしたこともしくは合同労組に加盟したことの故になしたものであるから不当労働行為であると主張するが、前記一の当事者間に争いのない事実および前記第二、第三で認定した事実(特に第三の⑩ないし⑫)によつても右主張を認めるに十分でなく、他に右主張を是認するに足りる疎明はない。したがつて、右主張は採用することができない。

五、(解雇権濫用の主張について)

1  (業務命令違反の有無)前記三⑲の認定事実のとおり、債権者らは昭和四二年一一月一日から本件解雇時まで関陸の貨物自動車の荷物を降す作業に従事していないが、前同の同年一二月一三日における支店長の作業要請は、作業員全員に対して一般的に作業に従事するよう要請したにすぎず、これをもつて債権者らに対する業務命令とみることは困難であり、他に会社支店が債権者らに業務命令を発したことを認めるに足りる疎明がない。したがつて、債権者らに業務命令違反の事実は認めることができない。

2、(一部労務提供拒否の意思表明)しかし、前記三のないしの認定事実のとおり、債権者らは、賃上げをしないかぎり今後臨時船の船内荷役と関陸の貨物自動車の積降し作業には従事しないという意思を会社支店に表明しており、他に解雇理由となつたものはないので、会社は、実質的には債権者らの右作業拒否の意思表明をもつてその解雇理由としたものと解せられる。そこで、会社の右理由による本件解雇が果して解雇権の濫用と評価されるべきものかどうかについて検討を加える。

さて、債権者らは、臨時船の船内荷役と関陸の貨物自動車の積降し作業を拒否する理由として、会社に対し賃上げを要求している。もちろん、労働者が自己の賃金を不足として会社に賃上げを要求するのは、労働者の要求として至極当然のことであり、法は一定の場合にはその権利を保障してさえいる。そして、ある場合には、賃上げを要求して労務提供拒否に至ることも、法は権利としてこれを保護している。しかし、反面、労働者は賃上げの要求をしさえすればいついかなるときでも労務提供を拒否することが合法となり、民事免責を受けるということにはならないし、また労務提供の拒否を表明することが解雇権の行使から解放されるということにもならないのは自明のことである。賃上げを要求して労務提供拒否の意思を表明する場合、その賃上げの要求が労働者の要求として真摯で、社会通念上これを肯認しうるかぎり、解雇権の行使からこれを保護すべきであるが、そうでなく賃上げの要求も実は口実で他に作業拒否の目的がある場合とか、仮に賃上げの要求であつても社会通念上一般に肯認しえないような場合には、もはや解雇権の行使から自由ではありえないものと解せられる。

これを本件についてみるに、前記三で認定したとおり(特に⑥、⑮)債権者らも、昭和四二年九月二一日に会社支店と全港湾支部とが締結した労働協約の定め(労働協約が脱退後の債権者らに効力を及ぼすかどうかにかかわりなく)に従つて、同年一〇月分から、臨時船の船内荷役と関陸の貨物自動車の荷物を降す作業とを含んだものとして、一人約七五〇円程度の賃上げがあり、債権者らも同月分からこれを受領しているのである。その後、解雇時まで三か月とたつておらず、しかも特別事情の変更があつたともみられない本件において、債権者らがさらに臨時船と関陸の仕事分について賃上げを要求するのに、果して合理性があるか、疑問なしとしない。

もつとも、右の点について、債権者らは、同年一〇月分から賃上げの実施があつたのは、これは専ら同年一〇月から開始された定期船の船内荷役を対象としたものであつて、臨時船や関陸の仕事は賃上げの対象とはなつていない旨主張し、債権者ら各本人尋問においてその旨供述し、右趣旨の〈証拠〉はあるが、右は前記三に掲げた措信しない部分を除く各疎明に照し採用することができないうえ、仮に右主張のとおりであつたとしても、前記三⑭の定期船の作業量と⑱の臨時船および⑳の関陸の仕事の作業量を比較すると、後者は前者に比べて極めてわずかの作業量であつて、前者の一、〇〇〇円の賃上げに対して、後者につきどれほど賃上げすべきであるかを考えるのに、その額はとるに足りないほどのものになるのは必定である。この点からみても、債権者らの賃上げの要求は合理性に乏しく、社会通念上肯認することができるほどのものではないと考えられる。

そうだとすると、債権者らの賃上げの要求は、名は賃上げの要求ではあつても、実は賃上げに藉口したにすぎず、他に目的があつたものと解せざるをえない。したがつて、債権者らの行為が賃上げを要求しているからといつて、直ちに解雇権の行使から解放されるものということはできない。

そして、債権者らの作業拒否の意思を表明した臨時船と関陸の仕事の作業量は、全体の作業量からいうとそのわずかの部分を占めるにすぎないが、ことは労務提供拒否の意思表明という労働契約上の本質的債務の不履行を表明しているのであるから、これが些細なことであると一概に断じることはできない。債権者ら作業員の職務の性質上、単純な肉体労働の繰返しが多いのであるから、他人との仕事量や仕事の質の差異が目につきやすいことを考えると、債権者らの作業拒否が波及的に他の作業員に悪影響を及ぼし、ついには会社の指揮命令権の機能に障害をもたらす結果となり、ひいては会社の職場秩序を乱すおそれが生じることのあることは否定できないところである。

そうであるとすれば、会社が、債権者らの本件作業拒否の意思表明をもつて、「支店業務に協力の意思なきもの」であると判断して、本件通常解雇をなしたことは、前記認定の会社側の全港湾支部との交渉、債権者らの説得などの努力を考え合せると、社会通念上首肯されるというべきであり、これをもつて解雇権の濫用と評価することはできないものといわなければならない。

六、(結論)

以上の次第で、債権者らの本件仮処分申請は、その理由がないから、その余を判断するまでもなく、これを失当としていずれも棄却し、申請費用につき民訴法八九条、九三条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。

(秋山正雄 梶本俊明 梶村太市)

〈目録省略〉

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